わたしの山日記
 
北アルプス
剣岳 登頂

2007.9.8(土夜)〜9.11(火) 夜行2泊3日

◆投稿者:田村 佐智子様
アルピニスト憧れの山、岩と雪の殿堂日本一険しいと言われる名峰に自分の足で登頂できた喜びは何事にも変えがたい体験となった。僅かながらでも確実な歩みを継続することで
困難な目標でも達成できる、そんな教訓を与えてくれたそして山登りが人生に例えられる理由を単なる知識だけでなく
身をもって実感できた今回の山旅であった。
でも忘れてならないのがリーダーの力量と仲間同士の協力、
お互い励ましあい助け合いながらの行動が結集して大きな力となり時には実現不可能と思われた夢が現実となり得るのだと思う。適切なアドバイスをしつつゆったりペースで先導してくれた戸頃さん。温かい気遣いをして下さった皆様本当にお世話になりありがとうございました。自分の体力や技術力も向上しないまま、ただ山の魅力に誘われ、また難しい山に来てしまった私。気の軽さを戒め、さらに登山力を向上させなければ。。。皆様に助けられたからこそ達成できた剣岳登頂でした。
◆9月 9日(日)  晴れ
9日 室堂平〜剣山荘へ
バスから降りると室堂平は抜けるような青空。静かに流れる白雲がさわやかだ。
立山玉殿の湧水をペットボトルに入れいざ出発。コンクリートで固められた広い道を下り地獄谷が近づくと硫黄の噴出する特有の臭いが鼻をつく。
ミクリガ池に映る立山が美しいしばらくは水平歩行
キャンプ場浄土沢の橋を渡り雷鳥コースの上り口に取り付く。
紫色の濃いオヤマリンドウが私たちを出迎えてくれるように美しく咲いていた
黄色い花。。。と思ったのはイワイチョウの黄葉であった。間もなく草紅葉の季節が。。。そんなことを思いつつ。下からもよく見えた石ころのジグザグ道を高度を上げていく。
空を仰ぐとすじ雲、ひつじ雲、時折飛行機雲が長い線を描いている。下方は次第に遠くなる。

室堂ターミナル。。。室堂平が箱庭のようだ。
西方は富山市と富山湾が見渡せ、眺望のよい登山道を心地よく進むやがて別山乗越にある剣御前小屋に到着。
期待していた剣岳はあいにく雲に隠れて姿を現さなかったが下方に雪渓が見えさらに目指す。
剣岳に一歩近づいたように感じられた
さらにゴロゴロした大小の岩が連なる上を慎重に上り下りする
沿道の岩陰にはタテヤマリンドウ、トウヤクリンドウ、イワツメクサ等可憐に咲いていてふと立ち止まりカメラを向ける。
ベニバナイチゴの赤い実がおいしそうに実っていて食べてみたくなる。
口にすると甘酸っぱい自然の香りが口一杯に広がった。
ひたすら黙々と歩くといつの間にか周囲の山々にかかっていた雲がとれて剣岳もその偉容な姿を現してくれた
素晴らしい!ここで全員で記念撮影をする。
その後ナナカマドの赤い実を愛で、チングルマの幻想的な姿に感心しつつ宿泊先の剣山荘への道をさらに下る。
豪雪の被害により今年7月1日に新設オープンしたばかりの山荘は快適であった
シャワーもあり寝具も清潔でさっぱりした気分で休養できた時間にも余裕があり仲間との楽しい語らいは今後の登山の参考になる事が多くとても有意義であった。
◆9月 10日(月) 曇りのち雨
10日 剣岳登頂の日
幾度となく窓を仰ぐ。東の方は明るいのにあいにくの曇り空
しかし見通しは悪くなく決行となる。朝食をいただきゆっくりの6時出発。
初めは一服剣への上り。次第に傾斜が増していく。
「ちょっときついかな、もし無理なら潔く引き返そう、行けるところまで行こう」そう思って歩き始めた。
途中のお花畑。適期を過ぎていたのでさすがに数は少ないが
タテヤマアザミ、ヨツバシオガマ、ウサギギク、ヤマハハコ、ツリフネソウなど結構花の見られる植物も残っていた。
アキノキリンソウはもちろん健在。
チングルマも高度を増したせいか花のついてるものもあった。
いつもは華やかな花の部分に気をとられ他の部分には神経が届かないため、開花の時期でないと何の花か分からなくなってしまう自分の勉強不足に改めて気づき草花についてよく調べてみようと思った。
せっかく登りつめた一服剣だがまた下り、すぐに前剣への上りが始まる
浮石が多く落石を生じさせないよう気を引き締めて登る。
いよいよ最初のクサリ場に差し掛かる。
見ていると少し恐い感じだが実際自分が通過する時はそれ程でもない。平蔵の頭まで何ヶ所も同様の箇所があったが
思ったよりも楽に通過できてよかった。
上ったと思うとまた下り
次のピークが頂上と思いきやまた上る。
滑りやすいので慎重に足を運ぶ
とうとう心待ち?にしていた垂壁カニのタデバエにたどり着く
わずか3分くらいで通過できると聞いて驚く
三点支持を忘れず慌てず登ろうと心に誓う。
時々手足の置き場に迷うが戸頃さんのアドバイスで難なく登り切り‘これでもう終わり?’と思うほどであった。
とにかく全員無事通過できホッとした。
ゴロゴロした大きな岩塊の上を通り心ウキウキ頂上へ
もう少しだ。。。やったぁ標高2999mの頂上だ。
皆の顔に安堵の色が。。。嬉しそう顔々。。。
外国人登山者もいて思わず握手をしてしまったくらい嬉しかった。体中達成感で充たされた
岩ばかりの頂上では記念写真を撮ったり、おやつを食べたりして僅かな休憩タイムを寛ぐ。
眺望は効かないが雲の動きに従い近くの山遠くの山が見え隠れ。。。
武蔵谷、平蔵谷まで見えることも。時には太陽も。
急に遥か下方まで見えてすごい高度感を味わうこともできた源次郎尾根や八つ峰の険しい岩峰、薬師岳初め後立山連峰の山々も姿を見せてくれ深山の気分も充分味わえたように思う。晴天時に比べ何となく神秘的な雲や霧の山もまたいいものである。刻々と変わる風景は山でしか見られないものであろう。
下りカニノヨコバエでは‘果たして足が届くのだろうか’とすごく心配していたが、最初の一歩を戸頃さんの適切な助言で簡単に決まり続いて水平移動これもすぐに終わった。
長いハシゴもあったが新しくしっかりしていて余裕で下りられた。復路は油断しないで気を引き締めて。。。と心に言い聞かせ、転ばないようつまずかないよう靴を丁寧に地面や岩に置くようにして注意して下った。
下山途中では雷鳥が散歩している姿も見られ一つ得した気分になった昼頃には山荘に戻れたので昨日同様、ビデオ視聴、雑談、読書と楽しい一時が持てた。
夜半小林さんに誘われ外に出てみる。すっかり晴れた夜空は満点の星!
空が近く星が大きく見えた。
いつまでもそのまま居たい気分であったが冷えるので部屋に戻る。
◆9月 11日(火) 晴れ
11日 剣岳とお別れ
本日も素晴らしい晴天。
5時朝暗いうちにヘッドライトを頼りにしつつ出発。
剣御前に向かう途中で鹿島槍方面からのご来光を拝む
剣岳もお世話になった山荘も見渡せる絶好の高台にて、時々後方を振り返り次第に遠くなる剣岳の姿を惜しみながら室堂へ。
やがて朝日が昇ると急に暖かくなってきたもののひんやりとした空気と爽やかな風に送られ、日本海を眺めつつ下り道は続く。
心なしかナナカマドの実が一昨日より赤味を増しているようで
朝日に映えて美しく光っていた
なぜかこれ以上下っていくのが惜しいようでまた登り返したい
この大自然の中にずうっと身を委ねていたいと思うと急に足が重くなるのを感じた。